自分を知るために その2

  • 2022年05月31日

エピソード

「新しいパターンの刃物を作ってほしい」と、お客さんからの依頼あり。         

パターンとは形状のこと。その形状を必死に説明してくれました。

でも、問題は○刃物の大きさ(直径) ◯刃物の刃数(ピッチ)◯刃物の角度(リード)大きく分けてこの3点。形状だけなら図面があれば確認できます。

更にお客さんは「これまで特に問題も無かったし、形状(パターン)だけを変えてくれればいいです」と。

話を簡単に終わらせようと思っていたようでした。

でも 使う機械の能力、使う木材の特徴、仕事の精度を考慮した上で(直径)(ピッチ)(リード)を設計(デザイン)することで、、、

使用する機械の負担を抑え作業の安全性を高め、切削面の仕上がりを美しくする。

結果 ペーパー掛けなど、一番手間のかかる仕上げの工程を省くことができるのです。

図面上のパターンを刃物に置き換えるだけなら、作業の安全性も仕上がりの美しさも得られなかったでしょう。

その後、そのお客さんからは刃物というより仕事(作業)の相談を受けるようになりました。 

 

これまで使ってきた刃物のデザインが当たり前なのではありません。

問題が無いから変えない、というより問題が見えていなかったのです。

ときには外部の意見、とりわけ専門家の見解を求めることは重要なのです。

 

結論

当たり前が当たり前でなくなる時

 見えていなかった問題に気がついた時

あなたの仕事はそこから進化し始めることでしょう。

by 中野由唱 よしどん

自分を知るために その1

  • 2022年05月01日

自分は人にどう見えてるのか、人からどう見られているのか? 

誰もが気になるところです。

こんにちわ

今年で創業65年の刃物専門店二代目 よしどん こと 中野由唱 (なかの よしあき) です。


突然ですが、、、、

あなたがショッピングで洋服を購入する場面を想像してみて下さい。

私が洋服を選ぶ時は サイズは試着して自分で確認します。

ですが デザインや色は、いつも妻か売場店員の方に見て貰います。

好きな色が似合う色とは限らない。

 むしろ 好きな色は自分に似合わない。

 これが今まで生きて来た私なりの結論。 

 だから 私の洋服選びは人任せが基本。

人が選んだものを着るなんて、若い頃なら考えられなかったことです。

 でも 自分の好みで選ぶと、どうしてもワンパターンになってしまう。

 そこで 妻や他人の目を借りると自分では到底選ばないような洋服が候補に上がる。

 結果  選択の幅をグッと広げることになる。 

そして、それまで見えていなかった世界が見えて来る。

 

本当は存在しているモノが自分の脳に伝わらない状態なんですね!!

 

長い期間その仕事に関わっていると、自分のことも仕事のことも

日々のコトが時間経過と共にどこか「当たり前」に映って見える。

つまり

人は自分のことが分かっているようで分かっていない。 

更には、分かっていないこと自体に気が付かない。

 

まっ、こんな状態に陥りがちです。

今日はここまでにしときます。

続きをお楽しみに(^.^)/~~~

つづく

by よしどん 中野由唱

刃物の弱点

  • 2022年01月15日

こんにちわ

北海道旭川市で創業64年の刃物専門、中野特殊刃物工業の代表で研師の中野由唱(よしあき)です。

 

私がこれまで44年間で関わった刃物は実に様々です。

いろんな場面で色々な刃物が色々な用途で使われています。

 

中野特殊刃物の場合

木工場、家具工場で使われる「丸のこ」や「帯のこ」がその代表ですが、SNSで仕事や日常のことを発信していると多くの人と話をする機会が増えます。

その結果〝家庭で使われている包丁が如何に切れない状態か〟が分かってからはここ10年ほど、包丁にも力を注いでいます。

 

ここで私が関わった『おもしろ刃物たち』の一部を紹介しましょう。

 

・氷彫刻のみ

・ワカサギ釣りのアイスドリル

・公式スケートリンクの氷面仕上げ用ブレード

・ゴルフ場のフェアウェイ専用芝刈機の刃物

・ピアノ響板工場の精密刃物

・ペットボトルリサイクル工場の粉砕刃物

・外科病院のメス(今はありません)

 

農業、林業、水産業、酪農業、土木に造船、

製紙業、自動車産業、建築業

にスーパーの惣菜部 などなど

 

とにかく刃物は多種多様で、日常の暮らしに深く関わっています。そしてそのひとつひとつが私たちの生活を豊かにしてくれているのです。

 

ところでみなさんは「刃物は硬いものに弱く、柔らかいものに強い」そう思っていませんか?

若い頃の私はそう思っていました。

 

ところが

 

入社して3年の研磨工の見習期間が終わり、訪問した製紙工場で初めて紙の切断作業を見た時 その思いは一転しました。

 

柔らかい紙を切っているはずの刃物の切れ味が、私の目の前でみるみる落ちて行く。

私はその現場の事実に「えっ何でー」と唖然とするばかり、今思えば 刃物を研ぐ作業をしている私だからその事実を受け入れる他なかったのかも知れません。

 

刃物にとって最も苦手なことは、、

 

機械的に動く刃物の回転速度にムラがあること。

切る相手が、木や布地と違ってタテヨコの繊維がはっきりしていないこと。

があります。

 

最近、既製家具や既製建具によく使われているMDFという圧縮木材があります。

簡単に言えば、

木の粉を圧縮して固めたもの。

これは繊維方向が無いため、加工に使う刃物の磨耗は一般木材と比べて3倍以上。

つまり、すぐ切れなくなる ということ。

しかし、材質そのものは柔らかいものが多いです。

 

また、洋裁の裁鋏(タチバサミ)は型紙などの紙類を絶対に切らぬこと、と言われています。

すいて作る和紙はいいのですが、西洋紙やコピー用紙は圧縮されているのでハサミが早く切れなくなります。

 

ナイフのような刃物が研ぎ上がった時、試し切りで新聞紙や雑誌を切っているのを見かけますが みなさんは決してマネしないでくださいね。

せっかく仕上がった刃物を、使う前に大きく磨耗させることになってしまいますから。

 

まとめ

自分が使う刃物を自分の手で研いで使う場合はあまり気にしなくていいと思うのですが、

プロが預かった大切な刃物はそうはいきません。

その刃物の弱点を知り、性質や特徴に合わせた取り扱い

をすることが大事です。

 

『みなさんがもし 研ぎ上がった刃物の試し切りをする場合は、十分注意してください』

 

刃物の性質や特徴を考えることは、刃物を好きになるキッカケになるはずですから。

 

by 中野由唱 よしどん

そもそも切れない刃物って

  • 2021年10月18日

刃物は切れるから刃物

切れない刃物って そもそも・・・・

 

こんにちわ

北海道旭川で創業64年目の刃物専門 中野特殊刃物工業 代表で研師 中野由唱です。

2021年10月17日 日曜日

旭川に初雪が降りました。

本格的な冬の到来まで、あと僅かです。

 

今から44年前、大学の卒業と同時に家業の中野刃物に就職した私は他の業界を知りません。

「視野が狭い」

と、言われるかもしれません。

 

私はその分 刃物との付き合いが深くなりました。

正直、最初は刃物のことはあまり好きではありませんでした。

でも。。。。

刃物について、ひとつひとつ基本を学んで行くとどんどん疑問が湧いてきて刃物にのめり込んで行きました。

包丁、スライサー、チップソーなど工場や家庭で使われている刃物は色々あるけれど、今 思うことはひとつ。

  • 刃物が切れる悦びを伝えたい
  • 刃物が切れることによる幸せを感じてほしい

刃物は切れるから刃物

切れない刃物は刃物とは呼び難いです。

けれど、

多くの方が実は切れない刃物をそれと気付かずに使っています。

常に切れない刃物を使っていると、切れない事実にも気が付きません。

やはり、私は日本の刃物の優れている点を伝える仕事について良かったんだと思っています。

工場や家庭で使われる刃物が抵抗なくスッと働き、思いがけない悦びを感じてくれると嬉しいです。

そんなことを思った初雪の降る日曜日です。

by 中野由唱  よしどん

 

豊かさと便利さのはざま

  • 2021年08月29日

こんにちわ

北海道 旭川市 で創業64年目 刃物専門 中野特殊刃物工業株式会社 代表 研師 中野由唱です。

『人間にしか出来ない仕事をしないと、いずれはAI(人工知能)に取って代わられるぞ』そんな言葉を聞くと職人の将来に危機感を持ってしまうところです。

今年の北海道は暑さが厳しく、特に旭川は30度以上の真夏日が連続27日と 記録的な暑さでした。

これも地球温暖化によるものでしょうか。

子供の頃から一番好きな魚は秋刀魚、その秋刀魚も海水温度の上昇で今ではすっかり高級魚になりました。

山のあちらこちらに中継アンテナが立ち始めてからカラスが増えてスズメを見なくなりました。

これらはみな人間が便利さを追い求めて来た結果、生態系の破壊に繋がっているのか。

そうだとしたら このコロナ禍、少し時間を巻き戻して生活してみるのも あり でしょう。

我家では昔から料理の出汁は化学調味料ではなく、鍋に出汁昆布を入れて水に浸すだけ。

2時間もおけば充分に出汁が出ます。

夜寝る前にしておくと、電気も火も使わずに出汁を取ることが出来ます。

砥石で包丁を研ぐことも同じで、電気も火も使いません。

機械を使って研げば、短時間で簡単に研ぐことは出来ます。

でもそれは、刃先を荒らして一時的に食いつきを良くするだけなのでは?

その代わりに刃の強度が極端に落ち刃割れや刃欠けの原因を作ります。

 

40年間 刃物に関わって強く思うこと

機械研ぎよりも五感を使う手研ぎの方が切れ味の良い刃が付く。

そして、手研ぎは無限に進化できる。

実は、中野刃物は10年前までは研磨精度を上げるため、刃物を研磨機に固定する治具の製作に結構費用をかけていました。今はほとんど使わなくなりました。

現在の中野刃物は機械研ぎと手研ぎの優れた部分を融合させて刃物を研いでいます。

人にしか出来ない「研ぎ」の形を作って、伝統を継承しながら 更に 研ぎながら使う新しい日本の文化を世界に伝えたい。

地球の未来を考える時、便利さよりも豊かさを大切にしたいです。

あなたもそう思いませんか。

by 中野由唱 よしどん

 

秘密の遊び場

  • 2021年05月18日

こんにちわ

今年で創業64年目を迎える北海道旭川 中野特殊刃物工業(株) 代表  研師の中野由唱(よしあき)です。

 

昭和32年、私が2歳の時 父は旭川で刃物店を創業させた。

新潟県の新発田市から家族5人で旭川へ移住して間もなくのことだった。

旭川は家具の一大産地。

最初は家具工場の「丸のこ」や「帯のこ」を研ぐことから始め、次第に木材加工機械の刃物を研磨するようになった。

 

当時、私たちの住む家は台所と6畳間が二つでそのうち1つは目立場(めたてば)=工場として使っていた。

2階は別の家族が入っていて、借家というより間借りだった。

狭い6畳の部屋に家族5人で暮らしてました。

実は、その目立場は私が小学校に入るまでは秘密の遊び場でした。父からは『絶対に工場(目立場)に入るんじゃない』とキツく言われてました。

 

その頃 父は・・・・

毎朝6時には家を出て、自転車で家具工場に配達。

次の代わりの刃物を持ち帰り、午前中目立場で刃物を研ぐ。

昼食。

昼寝。

再び配達へ。

帰宅後、目立場で刃物を研ぐ。

仕事の合間に夕食を摂る。

その後、深夜まで目立場で再び刃物を研ぐ。

そんな具合でした。

日曜祝日も仕事をしていたので、父の顔を見ることは殆ど無かった。

「絶対に入るんじゃない」と言われると入りたくなるのが人情ですよねっ!

だから

学校が休みの日曜日と祝日は私に与えられたチャンスでした。

こっそり入る目立場にはキラッと光るものがたくさん、当時の私には宝物でした。

丸のこ、帯のこ、ルーター、カンナ、カッター、他に機械やヤスリや工具も。。

手にとって光に当てたり、

見てるだけでワクワクしてました。

でも

目立場を出る時には宝物を置いてあった場所に元通りにしておく必要があります。

刃物を見て、

研いだ刃か 研ぐ前の刃か。

刃の表か裏か。

一瞬に判断して、同じ場所に同じ向きで同じ位置に、父に絶対に分からないよう 正確に元通りにしておきました。

一度だけカンナ刃で指を少し切ったことがあります。

父に何故「入るな」と言われたかその時分かりました。

私には姉が二人いますが、男兄弟がいません。

私は小さい頃から家業を継ぎ、刃物屋になること以外考えたことはなかった。

そんな私ですから学校を出てからも刃物の世界しか知りません。

他の世界を全く知らないのです。

幸か不幸か、私の職歴は1つだけ。中野特殊刃物工業です。

だから刃物に集中出来るのでしょうか。

時々思うのですが、もしかしたら

刃物を元の形に復元したり、元の角度に戻したり、あの時の秘密の遊び場が今の私を育ててくれたのかも知れない、と。

父から教えられたこと

  • 仕事は盗め
  • 腕のいい職人の仕事を見て覚えろ
  • あとは自分でやってみろ

 

教訓

人から教えられた仕事は覚えないが、面白くてワクワクドキドキしたことは忘れない。

人はワクワクドキドキしたことに取り組んだ時、熱中する。

 

by 中野由唱 よしどん

刃物が持っている能力を引き出そう

  • 2021年03月21日

こんにちわ

中野特殊刃物工業株式会社

代表で研師の中野由唱(よしあき)です。

切れないままの刃物は刃物ではありません。

刃物は使えば磨耗して切れなくなります。

研ぎながら使うのが、刃物を上手に使うコツ。

 

  私が父親の創業した会社に入社してから43年になります。

最初の3年は研磨工として工場にこもって機械刃物と包丁を研いでました。

「仕事は見て覚えろ」

「人の仕事を盗め」

と、父親に言われて覚える、というよりも身体に叩き込むという状態で必死でした。

結果 入社3日目には、実際に機械をひとりで操作して刃物を研いでいました。

そして

4年目には営業で180軒の得意先を担当。

営業と言っても、得意先を定期的に訪問して研磨する刃物を預り持ち帰ること、が主な仕事でした。

昭和53年当時の旭川は家具メーカーが200社以上もあって、家具工場にはよく行きました。

そこで決まって耳にしたのは

「そこの機械に付いている刃、切れるかどうか見てってくれ」という家具職人さんの言葉。

機械刃物は安全カバーがあったり、機械の内側に取り付けてあったり、刃先を目視できない事がほとんど。

なので、素手で刃先の感触を確認して判断してました。

(指先の感触は、これで鍛えられたようだ)

切れるかどうかは使う人が一番よく分かるのにー と反発しながら。。

切れる刃物を常に使っていると

  • 製品の品質が向上
  • 原材料の節約
  • 作業の省力化
  • 作業者の負担軽減

その他、機械の消耗抑制効果あり。

 

刃物の見直しで、年間900万円の原料節約につながったケースもあります。

単独では何もできない刃物ですが、機械との相性・材料との相性を考慮することで

現状の生産性は見違えるほど向上するものです。

家庭の包丁もまた同じで

ほとんどの人が切れない包丁を我慢して使っているのが現状です。

切れる包丁を使うと

見た目も味も良くなり、食材の持つ栄養価を損なわずに調理時間も短くなる。

ニンジンを切っても、まな板は赤くなりません。

赤くなるのは切れない証拠。

長ネギを刻んでつながるのも切れない証拠。

研ぎながら使う刃物文化は、仕事や生活を今よりもっと豊かにしてくれます。

 

教 訓 

世界が認めている日本だけにある刃物の文化を日本人は何も知らない。

1500年続く刃物の文化を日本人の手で繋げて刃物の能力を引き出そう。

    by中野 由唱 よしどん
 

2021年 コロナ禍の中で精研に徹する

  • 2021年01月17日

こんにちわ!

中野特殊刃物工業 代表で研師の中野由唱です。

2021年もよろしくお願いします。

今年であれから早10年。

2011年は、私のそれ迄で一番長い一年だったと感じています。

一番長い一年 と言っても時間の経過が遅かった訳ではありません。

むしろ早く感じた。

あまりにも大きな出来事が重なって、人生のターニングポイントとなったということ。

【由唱の意】

私の本名は中野 力 (なかの つとむ) と 読みます。

2011年3月11日、東日本大震災発生。

東日本大震災直後の3月14日から 仕事名として中野由唱(なかのよしあき)を名乗っている。

それはその年の1月から日本刀研師の修業に入った私が、師匠の故 頼住 譲先生に「力 つとむ」を使わずに「由唱 よしあき」を使うようにと言われたからです。

『刀』にとって『力』は鞘から刀を抜いた状態で最も忌み嫌う文字だ。研師を志すのであれば使ってはいけない。

ショックだった。。。

 しかし、私はその名前の意味を自分なりに考えて素直に「由唱」を受け入れることにした。

日本刀の由来を唱える人になれ。という頼住先生の思いを感じました。

社会人になってから33年間、刃物屋として生きて来た私です。日本古来の刃物の文化を後世に伝えて行きたい。 日本刀一筋80年の尊敬する師匠から授かった名前は天命とも思えた。

【運命的な出逢い】

更にその5日後の3月19日 旭川中小企業大学でのエクスマ(エクスペリエンスマーケティングの略)創始者 藤村正宏先生の講演を初めて聴講。

  • 「モノ」ではなく「体験」を売る
  • 安売りするな!「価値」を売れ!

という藤村先生の教えは余りにも衝撃的でした。私はそれからモノの伝え方をはじめから学んでいる。

【2011年から10年】

  • 『天命』
  • 『伝え方』

この2つが私の人生に鮮やかな色を付けてくれた。

【新たなる出発】

今、人間を試すかのように現れた新型コロナウイルスの感染拡大は未だ歯止めが掛からない。 その昔、人類は刃物という道具を創り出すことで大きな口や鋭い牙を持たずして動物の肉を食べて数十万年もの間 生き延びて来た。 災害からの復興の早さにも目を見張るものがある。

人類の英知は不可能を可能にする証明だ。

時々亡き日本刀研師の師匠の道場に掲げてあった〝精研〟の2文字を思い出す。

一点の曇りも無い無心の研ぎ。精神集中の研ぎ。

今コロナ禍にあって、改めて思うこと。

それは〝日本の刃物研ぎの文化〟を 志ある人に伝えたいと思っている。

人工知能やロボットに真似の出来ない技能を後世に伝えたいですからね!

伝える方法はリアルでもオンラインでも同じだと思っている。

人類の英知は不可能を可能にするのだから。

2021年は更に行動を加速させます。

    by中野 由唱 よしどん

包丁の簡易研ぎ器に落し穴

  • 2020年10月07日

最近、研ぎ直しに預かる包丁のなかに刃先の傷んでるものが増えています。

こんにちわ

中野特殊刃物工業(株)代表で 研師 の 中野由唱です。

ホームセンターなどの包丁コーナーには包丁と一緒に簡易研ぎ器が並んでいるのを見かけます。

カラフルで形も可愛い商品が多く、特にコンパクトで初めてでも簡単に使えそうなものが人気のようです。

せっかく作った料理も包丁が切れないと、食材がつぶれてしまい、食材の持つ旨味成分も口に入る前に まな板に吸われてしまいます。

毎日使う包丁はあなたの大切なパートナー!

いつも 切れ味のいい状態にしておきたいものです。

そこで、、、、

みなさん手軽に使える簡易研ぎ器を購入するわけです。

でも、ちょっと待ってください。

その簡易研ぎ器のカタログや取り扱い説明書をよーく読んでみると、こんなことが書いてあるんです。

『 シャープナー(簡易研ぎ器のこと)は刃先を荒らすことにより

一時的に食材への くいつき を良くするもので、砥石による研ぎ直しの代わりではありません。

シャープナーでの 研ぎ だけに頼っていると刃先の強度が極端に落ち、

刃割れや刃欠けの原因になります。

月に1〜2回砥石を使って研ぐことをおすすめします 』

 

いかがですか?!

簡易研ぎ器は調理中など その場でどうしても切れ味を取り戻したい時にのみ使って下さい。

普段は砥石で研いで下さい。

ということになりませんか?

私がこれまでにお客さんに聞いた限りでは、大多数の方が簡易研ぎ器を砥石の代わりだと思っていて  「繰り返し何度でも使えるものだ」 と、勘違いしています。

説明書にもあったように、簡易研ぎ器を繰り返し使っていると包丁の寿命を極端に短くします。

例えば、20年→1年、10年→3ヵ月、5年→1ヵ月

こんな具合です。

 

決して大げさな話ではないのです。

そして、更に使い方を間違うと1回の使用で包丁を壊してしまうこともあります。そんな方が今までに10数人はいたかな。。。

「やっとの思いで買ったばかりの包丁なのにーーー」と泣いたお客さんもいらっしゃいました。

私は簡易研ぎ器をお客さんには勧めません。

でも、もし、どうしても、使いたい時は、包丁をすべらすように軽く引く。

しっかり刃を付けたいからと言って、力を入れるのは御法度。

手元から始まり 先端で終わるように 1回または2回 通すだけ。

それ以上は包丁を壊してしまいます。

とにかく、取り扱い説明書をよく読んで、書かれている通りに使ってください。

(私は勧めませんが。。)

プロの料理人は包丁をとにかく大切にします、それは昔も今も変わりません。

プロの料理人は自分が作る料理の出来栄えは、包丁の切れ味が大きく影響することを、料理人自身が知っているからです。

新鮮な食材と上質の出汁、それを腕のいい料理人が調理すれば美味しい料理が出来上がるでしょう。

さらに、もっと作りの良い切れ味バツグンの包丁が加われば

素材の味を活かした

栄養価の高い

舌ざわりの滑らかな

極上の味に変貌するのです。

美味しい料理はみんなを笑顔にします。

 

  • 玉ねぎ切っても涙は出ない
  • キャベツの千切りが甘くなる

これらは当然の結果なんだと思います。

包丁研ぎは水と砥石を使う、昔ながらの方法で研ぐ 「手研ぎ」 を お勧めします。

滑らかな切れ味が持続して料理の味がグーンとアップします。

その積み重ねが

家庭料理を楽しいものにしてくれます!

 

教訓

簡単に研いだ包丁は、簡単に切れなくなる

料理と包丁研ぎは手間を惜しむな!

by 中野由唱 よしどん 

 

兵法の用語「守破離」とは

  • 2020年09月05日


こんにちわ 

中野特殊刃物工業の代表で研師の中野由唱です。

先日、噺家さんの投稿でこの「守破離」を知りました。

最近「今は下積みする時代じゃないよね」とよく耳にしますが、私もそう思います。

そしてそれは職人の世界でも同じこと。

40年刃物を研ぐ仕事に携わっていますが、私が若い頃は「仕事は人のやる事を見て盗め」と言われて仕事(技術)はあまり教えて貰えませんでした。

仕事に関する質問は1日ひとつしか許されません。

どうせ1度に2つも3つも覚えられんだろう、というのがその理由でした。

でも仕事を覚えていくうちにひとつひとつの作業にはいちいちその意味があって、全ての作業は繋がっていることが分かって来たのです。

最初に系統立てて仕事を覚えていたら、どうしたら刃物がもっと切れるようになるか、を考え始める時期が5年は早くなった。と思うのですがー

まっ当時はそう言う時代だったんですね。

後悔はしてませんよ。

ところで「守破離」の話です。

守破離は兵法の用語ですが芸事のステップ、修行段階を示した言葉。

「守」→型や技の基本を確実に身につける段階

「破」→基本を発展させる。基本をあえて打破ってみる段階

「離」→基本を知り、基本をあえて打破った上で自分オリジナルの新しいものを確立する段階

日本において芸事の文化が発展、進化してきた創造的な過程のベースとなっている思想です。

そのプロセスを守・破・離の三段階で表しているのです。

勘違いする人がいると思うので強く言いますが、ここで大事なのは三つ目の「離」の理解です。

自分オリジナルの新しいものを確立する、とあります。

しかしこれは熟知して完全に身につけた基本、そしてその基本を あ・え・て 打破った上で創造すること。

基本の真髄は時を越え脈々と流れていて、受け継がれなければなりません。

それを忘れて造られるオリジナルは「守破離」のステップを逸脱することになるのです。

今は下積みする時代じゃありません。

「守」の技を確実に身につける→技を会得する

「破」の打ち破る→技を極めた上で独自の捉え方をする

「離」のオリジナルの新しいものを確立→新しい技の捉え方を自分の中ではスタンダードにする

下積みはしなくても「技への探究心」は幾つになっても持ち続けたいものです。

以上、職人の独り言でした。

by 中野由唱 よしどん