2020年釧路の包丁研ぎ方教室にあたって

  • 2020年08月19日


今年も『包丁研ぎ方教室』を釧路で開催できることになりました。

こんにちわ、中野特殊刃物工業 代表で研師の中野由唱です。

毎年5月の第2日曜日、母の日に開催している釧路教室も今年で7回目。

受講人数を今までは10人迄に制限し、カリキュラムも生徒さんの包丁研ぎの経験値を考慮しながら、みんなで楽しく過ごせるよう組み立ててきた。

しかし

過去6回の開催で延べ60人に包丁の研ぎ方を指南したが、そのうち実際に自分で研いでいる人はほとんどいない。

「初心者でも分かるように基本をしっかりと教えたのに〜折角研ぎ方を覚えたのに〜なんでー、、、」と思った。

少し折れかけていた私の心をこのふたりが救ってくれた。

丸甲金物(株)の社長 木元章義さん

(株)アシストの社長 浅野葉子さん

ふたりの前向きな言葉に私のやる気が再燃した。

ふたりには感謝しかない。

あ り が と う

新型コロナの影響で5月10日の予定を延期して、9月13日の開催が決まってあれこれと考えている間に

同じように延期になっていた道新文化センター札幌大通教室で7月19日、「日本刀の世界」というタイトルで講演させて貰いました。

日本刀の起源、歴史、仮名手本忠臣蔵など

受講者に興味を持って貰えるように。。

と思っていたのだが〜

結局、持参した刀(水心子正次極)を見て貰った時が受講者全員の目が一番輝いていた。

【百聞は一見にしかず】を改めて痛感した瞬間だった。

私はこれを教訓にするっ。

テクニックよりも日本刀からつながる鋼(はがね)と研ぎの持つ底力を多くの人に体感して貰うことを。

これまで他にも何度か「包丁研ぎ教室」を開催してきた。

2時間程の教室で、研ぎのコツとタイミングさえ分かれば初心者でも研げるようになる、と信じていた。

でも違ってた〜

テクニックだけを伝えて、研ぎの心を置き去りにしていた〜反省。

 

ここは鋼(はがね)の国 日本だ!

今、和食ブームと共に世界中から注目を集める日本の包丁、そしてその研ぎの文化。

折角日本人なんだから〜

世界一切れ味のいい包丁を、研ぎながら使う日本の文化、日本にしかないこの文化をもっともっと味わって欲しい。

研ぐことも大事だが、美味しい食事で家族円満になることを大切にしたい。

【美味しい食事で家族みんな笑顔になーれ】

包丁研ぎ方教室を通して家族円満の秘訣を伝えたいなぁ。

折角日本人なんだから。

 

by 中野由唱 よしどん

 

包丁研ぎで心に潤いを

  • 2019年07月25日

忙しい毎日を過ごす現代人。

自分の周りの環境の景色や音、空気の匂いやそよぐ風、そういうもの感じている人 少ないんじゃないかな?私はたまに感じる程度です。

そして、それらはすべて五感で感じるもの。

研ぎ澄ます

という言葉があります。ほとんどの人は「耳をそばだてて、神経を研ぎ澄ます」などと心の動きを鋭敏にする意 と思っているでしょう。もちろん間違いではありません。

でも本来の意味は

刃物などを良く研いで、少しの曇りもないようにする。

つまり、刃物をしっかり研ぐことを研ぎ澄ますと言うのです。

そして、研ぎ澄ますことは五感を使うことなのです。

現代人は毎日の暮らしの中で、この五感をつかう機会がどんどんと無くなっています。人間だけが持つこの五感、大切にしたいですよね。

以前「包丁研ぎを教えてください」と妹背牛町の女性農業者グループさんから声をかけていただき、そのお一人が包丁研ぎ教室の感想を日本農業新聞北海道版に寄稿してくれました。

食と農 広がる輪 3年前のものですが、投稿者ご本人から了解を頂いたのでここにご紹介します。

「包丁を研ぐ時間」

一昨年、女性農業者グループ昴(うずら)で包丁研ぎ講習会を行った。全員が農家であり主婦であるメンバー、興味の度合いは言わずもがなである。

講師はその時包丁研ぎにはまっていた私の友人から、師とする研師を紹介してもらい旭川から招いた。

研ぎ方そのもの(持ち方・手順・研ぐ角度など)はもちろん、研ぐ前に砥石を30分以上水に浸けておくこと、包丁の保管の仕方(水気・湿気は厳禁)、木製のまな板が一番刃を傷めない、ということなど たくさんのことを教わった。

用意されたサンプルの包丁は当然だけれど、どれも切れ味抜群で 参加した8人のメンバーで代わる代わる試し切りすると、黄色い歓声が。切れ味の良い包丁だと野菜がより薄く細く切れるし、お肉がムニュとではなくサクッと切れる。

料理が楽しくなり、切る作業も安全になるのだ。

ユーモアもあり親しみやすいお人柄の研師は刀も研ぐとのことで、そのまなざしにメンバー一同すごみを感じた。それぞれ持参した包丁も蘇らせてもらって、感謝感激の講習会となった。

あとは自宅で練習あるのみで、さっそく自分なりに研いでみるも 刃の〝返し〟の感覚をつかむのにしばらく試行錯誤した。そのうちに普段使いの私の包丁は、研ぐ角度が間違っていた上に 持ち前の馬鹿力も手伝ってか、研ぎ過ぎてペティナイフのように小さくなってしまった。

そうして昨夏に、「昴(うずら)」メンバーで講師をしてくれた研師経営の刃物店に出掛ける機会があった。講習会に参加していなかったメンバーも、話を聞いて試し切りさせてもらうことができて、砥石や包丁を購入するメンバーも多数。

私も再度研ぎ方へのアドバイスをもらい鋼(はがね)の包丁を買った。大満足の切れ味の包丁は、毎日使う台所の相棒であり宝物になった。

日々は移り動いていて、雪解け時期からこの春は特に考えることも多く、気が付けば包丁研ぎから遠ざかりがちになっていた。

思い出したように久々に研いでみると、集中して刃と向き合う時間は不思議と心も落ち着かせてくれた。

「少し余裕が出て来たのかな」と、自分の内面とも向き合ってみる。切れ味もよくなり一石二鳥、これからも包丁を研ぐ時間を大切にしたい。

(橋向美月・妹背牛町の米農家)

五感を使った包丁研ぎは集中するとストレス解消にもつながります。

何でも簡単で手軽になっている世の中です。しかし簡単に研げるものは、簡単に切れなくなる。それが刃物です。

みなさんも研ぎ澄ますを是非実践してほしいものです。

by 中野 由唱 よしどん

【目標 1000人】

  • 2017年09月21日

(中砥石を水に浸けます)

今年で創業60年の中野特殊刃物工業、私は40年間 刃物と共に過ごしてきました。

【家庭にこそ包丁研ぎの習慣が必要】
この事に気付いて10年。
ここ10年間で12,550本の包丁を研がせて貰いました。

時々包丁の研ぎ方を覚えて貰うため
グループレッスンの講師もつとめます。

2017年9月9日と10日も「包丁研ぎ方教室」の講師に招かれ
旭川を離れ道東の釧路市、中標津町とお邪魔して来ました。

各教室10名の定員、それが満席になり嬉しかった。

4年くらい前にドタキャン4名で、結局4名の教室だったこともありました。

今回の釧路教室、中標津教室 どちらも
包丁研ぎが初めてという初心者は10名中 6名でした。

教室の進行を簡単に書いてみます。

はじめに、、、、
あいさつ、試し切りに次いで
包丁の握り方、左手指の置く位置、
力の加減などの説明からスタートです。

授業が進むにつれ、生徒さんたちの表情も真剣になって行きます。

市場で包丁研ぎを本業にしている方もいましたが
研ぎの素質は10人10色。
ひとりずつ順番に指導して行きます。

時間が経過するにつれ、砥石がガサガサ、スーッから
シュッシュッシュッと、いい音に変わり出す。
どんどん手つきが慣れてきて
いい音に変わるんですね。

私が下研ぎを施したものもありましたが
概ね60分で全員の包丁が仕上がりました。

早速、みんなで自分が研いだ包丁を使って野菜を切ってみます。
人参、ピーマン、トマト、キャベツと、どれもきれいに薄く切れてます。

「オーーーー!」
「凄い!」
「キャッーー!」
「何コレーー!」
等々歓声が聞こえてきます。

2泊3日で690kmの走行、、、疲れました。。。
でも、参加したみんなのこんな声が聞きたくて
「旭川からやって来たんだよー」と
心で叫びながら出かけて行きます。

【人の役にたてる歓び】
私にとって、それは何ものにも変え難いものなんです。
包丁が切れると
美しく美味しく無駄なく楽しく
料理ができて
どんどん美味しくなるんだよーーー!!

家族みんな笑顔になーれ!

手研ぎの仲間を増やしたい。
目標 1000人

by 中野由唱 よしどん