発想から多重アングル感性へ繋ぐ

  • 2024年05月14日

今から40年ほど前のこと

私が30才代の頃の話です。

 機械刃物の仕事でいろんな製造工場に出入りしております。

家具、製材、建築、建材、リサイクル、etc、etc、etc~~~

主に木製品を製作加工する工場や工房がほとんどでした。

現場で働いている人員規模は一人二人から2000人3000人まで様々です。

 

 今日はその中で強く印象に残る工場の話です

そこはアイディアで他社が作らない木製品を製造する工場です。

工場で働いている人員は5人~6人の規模です。

 人の目にとまるような木製品を作っていました。

例えば、キタキツネやフクロウをモチーフにして

レターラック、お盆、靴ベラ、菜箸などの実用的なモノを作っていた。

飾るモノではなくて、とにかく生活に使う道具なんです。

 その工場の社長曰く 

 「うちは小さい工場だからあらゆる面で大手には敵わない」

 「だから、アイディアを出していくしかない」

その時、私は 「でも、この業界は特許でも取らないと直ぐにまねされますよ」 と言いました。

すると、工場の社長はこう続けて話します。

 「特許には時間がかかり過ぎる。認可がおりるまでにまねされるよ」

 「だから、短期間で大量に作って一気に はき出す」

 「そして、また次の製品を考える」

 「他の工場がまねして作り出すころには別の製品を出荷する」

 「商売はその繰り返しだ!」

 

んー、なるほどーーーーー(汗)

それにしても、よくアイディアが次から次へとでるものだなぁ~!!

私は感心しきりでした。

 でも、感心ばかりもしていれません。

必ず宿題を出されるからです(笑)

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ある日、突然に出る宿題。

例えばこんな風に。。。

四角の材料から丸い球状を切り出したい。

条件は二つある。

  • 費用のこと(予算に枠あり)
  • その工場の人員の器量で使える刃物を作ること

 ここから機械刃物業界で培ってきた技量と専門知識を基に刃物の設計を始めます。

顧客の依頼通りの刃物が完成して、顧客も満足できる製品を製作する。

当たり前が嬉しい瞬間に繋がります。

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 因みに、この社長は趣味が多彩なんです。

温泉と旅、カメラで自然撮影、パークゴルフなど

 突然、一週間ほど工場を休むことも度々ありました。

 「山陰地方を廻ってきた」

 「九州の温泉を巡ってきたぞ」

等々、よくあとから聞かされました (笑)

 今から思うと、アイディアの源は旅とカメラだったのだと思います。

いろんなアングルで、いろんなモノを見つめる目。

ひとつのモノを多重アングルで捉える感性。

これだったのかもしれない!!

これだ。

これなんだ!!

今、私は多重アングルで捉える感性をしみじみ大切だと感じている。

 

多重アングル感性は私の仕事にも活かされている。

この工場の社長との出会いに感謝しても感謝しきれない。

 機械刃物を設計する際に、私は意匠登録出願を一切考えない。

何故かというと、、、

刃物の刃部角度を0.3度 変更するだけで登録と異なる刃物になるからです。

 また、私は顧客から依頼される仕事は全て新規の仕事と捉えています。

常に今がベスト
いつも今が最高

そんな風に考えて仕事を楽しんでいます。

 なんといっても 刃物は製造現場の裏方です。秘密厳守は当たり前です。

 

今日のまとめ

秘密厳守と意匠登録って

そもそもつながるんだろうか?

疑問ですね。

問題ないとしても私は意匠登録しません。

裏方が好きだから!

by 中野由唱 よしどん