発想から多重アングル感性へ繋ぐ

  • 2024年05月14日

今から40年ほど前のこと

私が30才代の頃の話です。

 機械刃物の仕事でいろんな製造工場に出入りしております。

家具、製材、建築、建材、リサイクル、etc、etc、etc~~~

主に木製品を製作加工する工場や工房がほとんどでした。

現場で働いている人員規模は一人二人から2000人3000人まで様々です。

 

 今日はその中で強く印象に残る工場の話です

そこはアイディアで他社が作らない木製品を製造する工場です。

工場で働いている人員は5人~6人の規模です。

 人の目にとまるような木製品を作っていました。

例えば、キタキツネやフクロウをモチーフにして

レターラック、お盆、靴ベラ、菜箸などの実用的なモノを作っていた。

飾るモノではなくて、とにかく生活に使う道具なんです。

 その工場の社長曰く 

 「うちは小さい工場だからあらゆる面で大手には敵わない」

 「だから、アイディアを出していくしかない」

その時、私は 「でも、この業界は特許でも取らないと直ぐにまねされますよ」 と言いました。

すると、工場の社長はこう続けて話します。

 「特許には時間がかかり過ぎる。認可がおりるまでにまねされるよ」

 「だから、短期間で大量に作って一気に はき出す」

 「そして、また次の製品を考える」

 「他の工場がまねして作り出すころには別の製品を出荷する」

 「商売はその繰り返しだ!」

 

んー、なるほどーーーーー(汗)

それにしても、よくアイディアが次から次へとでるものだなぁ~!!

私は感心しきりでした。

 でも、感心ばかりもしていれません。

必ず宿題を出されるからです(笑)

~~~~~~~~

ある日、突然に出る宿題。

例えばこんな風に。。。

四角の材料から丸い球状を切り出したい。

条件は二つある。

  • 費用のこと(予算に枠あり)
  • その工場の人員の器量で使える刃物を作ること

 ここから機械刃物業界で培ってきた技量と専門知識を基に刃物の設計を始めます。

顧客の依頼通りの刃物が完成して、顧客も満足できる製品を製作する。

当たり前が嬉しい瞬間に繋がります。

~~~~~~~~

 因みに、この社長は趣味が多彩なんです。

温泉と旅、カメラで自然撮影、パークゴルフなど

 突然、一週間ほど工場を休むことも度々ありました。

 「山陰地方を廻ってきた」

 「九州の温泉を巡ってきたぞ」

等々、よくあとから聞かされました (笑)

 今から思うと、アイディアの源は旅とカメラだったのだと思います。

いろんなアングルで、いろんなモノを見つめる目。

ひとつのモノを多重アングルで捉える感性。

これだったのかもしれない!!

これだ。

これなんだ!!

今、私は多重アングルで捉える感性をしみじみ大切だと感じている。

 

多重アングル感性は私の仕事にも活かされている。

この工場の社長との出会いに感謝しても感謝しきれない。

 機械刃物を設計する際に、私は意匠登録出願を一切考えない。

何故かというと、、、

刃物の刃部角度を0.3度 変更するだけで登録と異なる刃物になるからです。

 また、私は顧客から依頼される仕事は全て新規の仕事と捉えています。

常に今がベスト
いつも今が最高

そんな風に考えて仕事を楽しんでいます。

 なんといっても 刃物は製造現場の裏方です。秘密厳守は当たり前です。

 

今日のまとめ

秘密厳守と意匠登録って

そもそもつながるんだろうか?

疑問ですね。

問題ないとしても私は意匠登録しません。

裏方が好きだから!

by 中野由唱 よしどん

 

刃物の弱点

  • 2022年01月15日

こんにちわ

北海道旭川市で創業64年の刃物専門、中野特殊刃物工業の代表で研師の中野由唱(よしあき)です。

 

私がこれまで44年間で関わった刃物は実に様々です。

いろんな場面で色々な刃物が色々な用途で使われています。

 

中野特殊刃物の場合

木工場、家具工場で使われる「丸のこ」や「帯のこ」がその代表ですが、SNSで仕事や日常のことを発信していると多くの人と話をする機会が増えます。

その結果〝家庭で使われている包丁が如何に切れない状態か〟が分かってからはここ10年ほど、包丁にも力を注いでいます。

 

ここで私が関わった『おもしろ刃物たち』の一部を紹介しましょう。

 

・氷彫刻のみ

・ワカサギ釣りのアイスドリル

・公式スケートリンクの氷面仕上げ用ブレード

・ゴルフ場のフェアウェイ専用芝刈機の刃物

・ピアノ響板工場の精密刃物

・ペットボトルリサイクル工場の粉砕刃物

・外科病院のメス(今はありません)

 

農業、林業、水産業、酪農業、土木に造船、

製紙業、自動車産業、建築業

にスーパーの惣菜部 などなど

 

とにかく刃物は多種多様で、日常の暮らしに深く関わっています。そしてそのひとつひとつが私たちの生活を豊かにしてくれているのです。

 

ところでみなさんは「刃物は硬いものに弱く、柔らかいものに強い」そう思っていませんか?

若い頃の私はそう思っていました。

 

ところが

 

入社して3年の研磨工の見習期間が終わり、訪問した製紙工場で初めて紙の切断作業を見た時 その思いは一転しました。

 

柔らかい紙を切っているはずの刃物の切れ味が、私の目の前でみるみる落ちて行く。

私はその現場の事実に「えっ何でー」と唖然とするばかり、今思えば 刃物を研ぐ作業をしている私だからその事実を受け入れる他なかったのかも知れません。

 

刃物にとって最も苦手なことは、、

 

機械的に動く刃物の回転速度にムラがあること。

切る相手が、木や布地と違ってタテヨコの繊維がはっきりしていないこと。

があります。

 

最近、既製家具や既製建具によく使われているMDFという圧縮木材があります。

簡単に言えば、

木の粉を圧縮して固めたもの。

これは繊維方向が無いため、加工に使う刃物の磨耗は一般木材と比べて3倍以上。

つまり、すぐ切れなくなる ということ。

しかし、材質そのものは柔らかいものが多いです。

 

また、洋裁の裁鋏(タチバサミ)は型紙などの紙類を絶対に切らぬこと、と言われています。

すいて作る和紙はいいのですが、西洋紙やコピー用紙は圧縮されているのでハサミが早く切れなくなります。

 

ナイフのような刃物が研ぎ上がった時、試し切りで新聞紙や雑誌を切っているのを見かけますが みなさんは決してマネしないでくださいね。

せっかく仕上がった刃物を、使う前に大きく磨耗させることになってしまいますから。

 

まとめ

自分が使う刃物を自分の手で研いで使う場合はあまり気にしなくていいと思うのですが、

プロが預かった大切な刃物はそうはいきません。

その刃物の弱点を知り、性質や特徴に合わせた取り扱い

をすることが大事です。

 

『みなさんがもし 研ぎ上がった刃物の試し切りをする場合は、十分注意してください』

 

刃物の性質や特徴を考えることは、刃物を好きになるキッカケになるはずですから。

 

by 中野由唱 よしどん

そもそも切れない刃物って

  • 2021年10月18日

刃物は切れるから刃物

切れない刃物って そもそも・・・・

 

こんにちわ

北海道旭川で創業64年目の刃物専門 中野特殊刃物工業 代表で研師 中野由唱です。

2021年10月17日 日曜日

旭川に初雪が降りました。

本格的な冬の到来まで、あと僅かです。

 

今から44年前、大学の卒業と同時に家業の中野刃物に就職した私は他の業界を知りません。

「視野が狭い」

と、言われるかもしれません。

 

私はその分 刃物との付き合いが深くなりました。

正直、最初は刃物のことはあまり好きではありませんでした。

でも。。。。

刃物について、ひとつひとつ基本を学んで行くとどんどん疑問が湧いてきて刃物にのめり込んで行きました。

包丁、スライサー、チップソーなど工場や家庭で使われている刃物は色々あるけれど、今 思うことはひとつ。

  • 刃物が切れる悦びを伝えたい
  • 刃物が切れることによる幸せを感じてほしい

刃物は切れるから刃物

切れない刃物は刃物とは呼び難いです。

けれど、

多くの方が実は切れない刃物をそれと気付かずに使っています。

常に切れない刃物を使っていると、切れない事実にも気が付きません。

やはり、私は日本の刃物の優れている点を伝える仕事について良かったんだと思っています。

工場や家庭で使われる刃物が抵抗なくスッと働き、思いがけない悦びを感じてくれると嬉しいです。

そんなことを思った初雪の降る日曜日です。

by 中野由唱  よしどん

 

豊かさと便利さのはざま

  • 2021年08月29日

こんにちわ

北海道 旭川市 で創業64年目 刃物専門 中野特殊刃物工業株式会社 代表 研師 中野由唱です。

『人間にしか出来ない仕事をしないと、いずれはAI(人工知能)に取って代わられるぞ』そんな言葉を聞くと職人の将来に危機感を持ってしまうところです。

今年の北海道は暑さが厳しく、特に旭川は30度以上の真夏日が連続27日と 記録的な暑さでした。

これも地球温暖化によるものでしょうか。

子供の頃から一番好きな魚は秋刀魚、その秋刀魚も海水温度の上昇で今ではすっかり高級魚になりました。

山のあちらこちらに中継アンテナが立ち始めてからカラスが増えてスズメを見なくなりました。

これらはみな人間が便利さを追い求めて来た結果、生態系の破壊に繋がっているのか。

そうだとしたら このコロナ禍、少し時間を巻き戻して生活してみるのも あり でしょう。

我家では昔から料理の出汁は化学調味料ではなく、鍋に出汁昆布を入れて水に浸すだけ。

2時間もおけば充分に出汁が出ます。

夜寝る前にしておくと、電気も火も使わずに出汁を取ることが出来ます。

砥石で包丁を研ぐことも同じで、電気も火も使いません。

機械を使って研げば、短時間で簡単に研ぐことは出来ます。

でもそれは、刃先を荒らして一時的に食いつきを良くするだけなのでは?

その代わりに刃の強度が極端に落ち刃割れや刃欠けの原因を作ります。

 

40年間 刃物に関わって強く思うこと

機械研ぎよりも五感を使う手研ぎの方が切れ味の良い刃が付く。

そして、手研ぎは無限に進化できる。

実は、中野刃物は10年前までは研磨精度を上げるため、刃物を研磨機に固定する治具の製作に結構費用をかけていました。今はほとんど使わなくなりました。

現在の中野刃物は機械研ぎと手研ぎの優れた部分を融合させて刃物を研いでいます。

人にしか出来ない「研ぎ」の形を作って、伝統を継承しながら 更に 研ぎながら使う新しい日本の文化を世界に伝えたい。

地球の未来を考える時、便利さよりも豊かさを大切にしたいです。

あなたもそう思いませんか。

by 中野由唱 よしどん

 

秘密の遊び場

  • 2021年05月18日

こんにちわ

今年で創業64年目を迎える北海道旭川 中野特殊刃物工業(株) 代表  研師の中野由唱(よしあき)です。

 

昭和32年、私が2歳の時 父は旭川で刃物店を創業させた。

新潟県の新発田市から家族5人で旭川へ移住して間もなくのことだった。

旭川は家具の一大産地。

最初は家具工場の「丸のこ」や「帯のこ」を研ぐことから始め、次第に木材加工機械の刃物を研磨するようになった。

 

当時、私たちの住む家は台所と6畳間が二つでそのうち1つは目立場(めたてば)=工場として使っていた。

2階は別の家族が入っていて、借家というより間借りだった。

狭い6畳の部屋に家族5人で暮らしてました。

実は、その目立場は私が小学校に入るまでは秘密の遊び場でした。父からは『絶対に工場(目立場)に入るんじゃない』とキツく言われてました。

 

その頃 父は・・・・

毎朝6時には家を出て、自転車で家具工場に配達。

次の代わりの刃物を持ち帰り、午前中目立場で刃物を研ぐ。

昼食。

昼寝。

再び配達へ。

帰宅後、目立場で刃物を研ぐ。

仕事の合間に夕食を摂る。

その後、深夜まで目立場で再び刃物を研ぐ。

そんな具合でした。

日曜祝日も仕事をしていたので、父の顔を見ることは殆ど無かった。

「絶対に入るんじゃない」と言われると入りたくなるのが人情ですよねっ!

だから

学校が休みの日曜日と祝日は私に与えられたチャンスでした。

こっそり入る目立場にはキラッと光るものがたくさん、当時の私には宝物でした。

丸のこ、帯のこ、ルーター、カンナ、カッター、他に機械やヤスリや工具も。。

手にとって光に当てたり、

見てるだけでワクワクしてました。

でも

目立場を出る時には宝物を置いてあった場所に元通りにしておく必要があります。

刃物を見て、

研いだ刃か 研ぐ前の刃か。

刃の表か裏か。

一瞬に判断して、同じ場所に同じ向きで同じ位置に、父に絶対に分からないよう 正確に元通りにしておきました。

一度だけカンナ刃で指を少し切ったことがあります。

父に何故「入るな」と言われたかその時分かりました。

私には姉が二人いますが、男兄弟がいません。

私は小さい頃から家業を継ぎ、刃物屋になること以外考えたことはなかった。

そんな私ですから学校を出てからも刃物の世界しか知りません。

他の世界を全く知らないのです。

幸か不幸か、私の職歴は1つだけ。中野特殊刃物工業です。

だから刃物に集中出来るのでしょうか。

時々思うのですが、もしかしたら

刃物を元の形に復元したり、元の角度に戻したり、あの時の秘密の遊び場が今の私を育ててくれたのかも知れない、と。

父から教えられたこと

  • 仕事は盗め
  • 腕のいい職人の仕事を見て覚えろ
  • あとは自分でやってみろ

 

教訓

人から教えられた仕事は覚えないが、面白くてワクワクドキドキしたことは忘れない。

人はワクワクドキドキしたことに取り組んだ時、熱中する。

 

by 中野由唱 よしどん

刃物が持っている能力を引き出そう

  • 2021年03月21日

こんにちわ

中野特殊刃物工業株式会社

代表で研師の中野由唱(よしあき)です。

切れないままの刃物は刃物ではありません。

刃物は使えば磨耗して切れなくなります。

研ぎながら使うのが、刃物を上手に使うコツ。

 

  私が父親の創業した会社に入社してから43年になります。

最初の3年は研磨工として工場にこもって機械刃物と包丁を研いでました。

「仕事は見て覚えろ」

「人の仕事を盗め」

と、父親に言われて覚える、というよりも身体に叩き込むという状態で必死でした。

結果 入社3日目には、実際に機械をひとりで操作して刃物を研いでいました。

そして

4年目には営業で180軒の得意先を担当。

営業と言っても、得意先を定期的に訪問して研磨する刃物を預り持ち帰ること、が主な仕事でした。

昭和53年当時の旭川は家具メーカーが200社以上もあって、家具工場にはよく行きました。

そこで決まって耳にしたのは

「そこの機械に付いている刃、切れるかどうか見てってくれ」という家具職人さんの言葉。

機械刃物は安全カバーがあったり、機械の内側に取り付けてあったり、刃先を目視できない事がほとんど。

なので、素手で刃先の感触を確認して判断してました。

(指先の感触は、これで鍛えられたようだ)

切れるかどうかは使う人が一番よく分かるのにー と反発しながら。。

切れる刃物を常に使っていると

  • 製品の品質が向上
  • 原材料の節約
  • 作業の省力化
  • 作業者の負担軽減

その他、機械の消耗抑制効果あり。

 

刃物の見直しで、年間900万円の原料節約につながったケースもあります。

単独では何もできない刃物ですが、機械との相性・材料との相性を考慮することで

現状の生産性は見違えるほど向上するものです。

家庭の包丁もまた同じで

ほとんどの人が切れない包丁を我慢して使っているのが現状です。

切れる包丁を使うと

見た目も味も良くなり、食材の持つ栄養価を損なわずに調理時間も短くなる。

ニンジンを切っても、まな板は赤くなりません。

赤くなるのは切れない証拠。

長ネギを刻んでつながるのも切れない証拠。

研ぎながら使う刃物文化は、仕事や生活を今よりもっと豊かにしてくれます。

 

教 訓 

世界が認めている日本だけにある刃物の文化を日本人は何も知らない。

1500年続く刃物の文化を日本人の手で繋げて刃物の能力を引き出そう。

    by中野 由唱 よしどん
 

新型コロナで来客減 その時気付いたこと

  • 2020年04月12日

こんにちわ

中野特殊刃物工業 代表で 研師 の 中野由唱 です。

私が家業を継ぎ、刃物の世界に飛び込んでから42年になります。

 

社会人1年生から刃物を勉強出来たことは、

私にとって何よりの財産です。

それは生産現場のお客さんから相談を受けた際、視点が人間より刃物に徹することが出来るから。

つまり「刃物を使う人はどうなのか」を「刃物的にどうなのかなぁ」と置き換えられる、ということ。

そしてそこが強みになる。

 

家具メーカーや住宅メーカー、製材工場や製紙工場などに機械刃物を提供しメンテナンス(刃物の修理、研ぎ直し)をするのが主な仕事。

さらに

  • 農業収穫
  • 水産加工
  • 食品加工

刃物の仕事は需要範囲が広いのです。

そして最近ではこんな仕事も加わりました。

  • カバン製造
  • ゴルフクラブ製造
  • 生薬製造

 

 

これらの仕事に刃物が活かされているのです。

 

私は時々この生産現場に提案して、刃物仕様の変更をお願いすることがあります。

 

材料のひき肌がきれいになり、歩留りが向上し生産工程を短縮することで働く人の向上心をアシストすることにもなります。

 

仕事が楽しくなると、仕事への意識が劇的に変化する。

目には見えないことですが、楽しくなる仕事をしてもらう。

これは大切なことです。

 

新型コロナウイルスの出現で来店客が激減して、振り返る時間が出来た私です。

 

今、何が大切かをしっかり見極めようと思います。

 

by 中野由唱 よしどん

 

右利き、左利き、あなたはどっち

  • 2020年01月18日

こんにちわ、中野特殊刃物工業(株)代表取締役の中野由唱です。

1955年生まれの私は、子どもの頃は左利きだった。小学校入学を前に大正生まれの両親から、『箸と鉛筆は右手で使いなさい』と言われて、、、右手使いを特訓した。

 

自分の名前をチラシの裏に書いて、書いて、書いて。

左手を身体に縛り付けて、右手だけでの食事。

まるでテレビアニメ「巨人の星」で飛雄馬が父一徹に左投げの猛特訓を受けるシーンみたいだった。(もっとも私の方がアニメより先ですけどー)

 

10日ほどで箸と鉛筆は右手でも使えるようになった。

私と年子の姉も左利きで同じ経験をしている。

私と同じか上の世代の人には珍しくない話なのでしょうが。

 

なぜ無理矢理 左から右にする必要があるのか、正直言って親には反発していた。

そして、ここから性格が湾曲してしまった、と自己診断しています、、、笑

 

でも、これがきっかけで「訓練で利き手は変えられるもの」とインプットされた私はその後、次第に人間に利き手があること自体疑問に思うようになっていったのです。

 

私が小学生の頃、スポーツと言えば

◾️野球

◾️ドッヂボール

◾️冬のスキー

ぐらいでした。

でも、中学校に入ると色んなスポーツに触れる機会が出来ます。

⚫︎卓球

⚫︎バトミントン

⚫︎バレーボール

⚫︎バスケットボール

⚫︎サッカー

と全て、両手両足でプレーしました。

当時(昭和42年)大流行だったボーリングも教えてくれた義兄が右利きだった、と言うだけで右で覚えて、、、でもいつしか左になっていたんですけどね!

 

こんなエピソードがあります。

中学の3年間私は野球部でした。

野球の場合、左利きだと守備のポジションが限定されます。

投手か

一塁手か

外野手かって

自分の可能性が摘み取られるようでいやだった。

それで野球だけは右でプレーしてました。

(結局3年間外野手でしたけど、、)

 

それが中2の夏休み前、部活終了後の雑談でコーチの先生が「うちのチームには左が居ないなぁ」と。

そこで私をよく知るチームメイトの沢谷君がひと言、「先生、中野は本当は左なんです」と。。

先生の目が一瞬光ったように見えました⁉︎

結局、それまで補欠だった私は『左と言うだけでライトのレギュラーをゲットしたのです。

 

翌日から右投げ右打ち→左投げ左打ちに転向。

中2の夏休みは

右手にはめるクラブの感触とボールのキャッチング

左打席でのクリップとスイング

と、この2つをテーマに猛特訓に明け暮れたことは言うまでもありません。

 

『人間は手も足も左右同じものを持っているのだから、左右同じように使えて当たり前』

今も私はそう思っています。

 

私の仕事は、機械の仕様や用途に合わせた刃物の設計・メンテナンス。

つまり、刃物を研ぐと言うこと。

 

機械刃物の種類は20ほど、材質ちがいやサイズちがいを加えると100種類。

再研磨や成型加工は刃物の種類に応じて専用研磨機を使うのですが、刃物には右回転と左回転のもの。右向きと左向きのものがあります。

機械によって左右対照の操作を必要とするものもあり、私には好都合!

 

でももし左右どちらかしか使えないとしたら、作業に合わせた治具をたくさん用意しなければなりません。

その時間と費用は大きい負担になります。

 

日本刀や包丁を研ぐ時も左右両手を使えることは、刃渡りの長い太刀や形の特殊なそば包丁・中華包丁を研ぐ場合かなり有利になります。

 

60歳を過ぎた今「私は選ばれた人間なんだ」と強く感じるのです。

私にしか出来ない仕事で、周りの人たちをしあわせにしよう!

 

研ぎの修業の終わりが見えて来ないのも、私の刃物人生がまだまだ続くと言うことなのでしょうね。

 

by 中野由唱 よしどん

 

 

 

 

機械研ぎと手研ぎの融合結果はツルツル美肌

  • 2019年05月04日

こんにちは、

中野特殊刃物工業 代表で研師の中野由唱です。

今日は「仕上げ刃物」について、あまり知られていないことをお話しします。これは木工機械の「仕上げ鉋刃」です。昔から大工さんが使っている手鉋(てがんな)を思い出してみて下さい。

長い角材の上を、滑らすように両手で引っ張って使っていたあれです。機械刃物で言えば、これがあれです。

滑らすように というところがポイント。

現在使われている機械刃物は、その殆どが刃物自身が回転して材料を切ったり 掘ったり 削ったり して使います。

しかし

仕上げ鉋刃だけは刃物を動かさずに固定し、材料を滑るように動かして表面を削って仕上げて行きます。

仕上がった材料の表面はツルッツル

そして、このツルツル感は回転刃物では出せないものなのです。

技術が進み刃物の素材もより硬いものが求められ、超硬や超合金などが主流になる時代。

超硬や超合金の刃物では、刃物を動かさずに材料を滑らせて削ることは出来ません。より硬くした為に、素材にいわゆる粘り柔軟性が無くなったことが原因です。

金属を硬くしていくと、対摩耗には強くなります。しかしその反面 衝撃に弱く、欠けやすく熱にももろくなってしまうのです。

文明は必ずしも進化している訳ではない

大工さんが使っていた、あの手鉋ほど表面をツルッツルに仕上げられる刃物は今の時代でも他にないのです。

そして、その手仕事の仕上がりの美しさは刃研ぎにも通じています。

機械で研いだ鋼(ハガネ)刃物を更に手研ぎで仕上げる。

ると、、、

切れ味が滑らかで材料がツルツルに欠けにくくなる。

切れ持ちが長くなり刃物の寿命が延びる。

機械研ぎと手研ぎの融合は、40年で辿り着いた「中野特殊刃物工業のオリジナル」なのです。

by 中野 由唱 よしどん

日本では珍しい刃物専門家

  • 2019年02月23日

よしどん節へようこそ

中野特殊刃物工業 代表の中野由唱です。

何度も書いていますが、2017年7月9日ミラサポに刃物の専門家として講師登録してから少しづつ機械刃物の相談や診断依頼が増えて来ました。相談の内容は様々です。

金物店でチップソー(丸のこ刃)の品揃えについて

木工クラフト工場で機械刃物の使い方と選び方について

農業機械の販売修理業で収穫機の専用刃物について

建築資材販売店でチップソーの在庫管理について

飲食店で包丁の切れ味が料理の味と仕事のレベルを左右する。

刃物は日常のあらゆる場面で活躍しているはず!

しかし、殆どの作業現場で活かされていないのが現実。

切れる刃物を使うだけで、現状を100%変えることができるのです。

ミラサポの専門家講師は何らかの資格を持った方が多いのですが、私は何もありません。だから、私からアドバイスできることは40年で得た生産現場の経験からだけ。

そのせいなのか、依頼主の方々はみなさん私の話を大きくうなずきながらよく聴いてくれます。

最初はそれでいい、と思ってました。でもその後 訪問したり電話で話したりしてみるとミラサポの成果が上がっていないことに気づくのです。

結局、診断やアドバイスを受けても依頼主自身が「変わろうとする心」で行動しなければ−何も変わらない–と言うこと

これからはミラサポの刃物専門家として、先ず変わろうとする心を持って貰えるよう意識して行こう。うん、そうしよう!

by 中野 由唱 よしどん