兵法の用語「守破離」とは

  • 2020年09月05日


こんにちわ 

中野特殊刃物工業の代表で研師の中野由唱です。

先日、噺家さんの投稿でこの「守破離」を知りました。

最近「今は下積みする時代じゃないよね」とよく耳にしますが、私もそう思います。

そしてそれは職人の世界でも同じこと。

40年刃物を研ぐ仕事に携わっていますが、私が若い頃は「仕事は人のやる事を見て盗め」と言われて仕事(技術)はあまり教えて貰えませんでした。

仕事に関する質問は1日ひとつしか許されません。

どうせ1度に2つも3つも覚えられんだろう、というのがその理由でした。

でも仕事を覚えていくうちにひとつひとつの作業にはいちいちその意味があって、全ての作業は繋がっていることが分かって来たのです。

最初に系統立てて仕事を覚えていたら、どうしたら刃物がもっと切れるようになるか、を考え始める時期が5年は早くなった。と思うのですがー

まっ当時はそう言う時代だったんですね。

後悔はしてませんよ。

ところで「守破離」の話です。

守破離は兵法の用語ですが芸事のステップ、修行段階を示した言葉。

「守」→型や技の基本を確実に身につける段階

「破」→基本を発展させる。基本をあえて打破ってみる段階

「離」→基本を知り、基本をあえて打破った上で自分オリジナルの新しいものを確立する段階

日本において芸事の文化が発展、進化してきた創造的な過程のベースとなっている思想です。

そのプロセスを守・破・離の三段階で表しているのです。

勘違いする人がいると思うので強く言いますが、ここで大事なのは三つ目の「離」の理解です。

自分オリジナルの新しいものを確立する、とあります。

しかしこれは熟知して完全に身につけた基本、そしてその基本を あ・え・て 打破った上で創造すること。

基本の真髄は時を越え脈々と流れていて、受け継がれなければなりません。

それを忘れて造られるオリジナルは「守破離」のステップを逸脱することになるのです。

今は下積みする時代じゃありません。

「守」の技を確実に身につける→技を会得する

「破」の打ち破る→技を極めた上で独自の捉え方をする

「離」のオリジナルの新しいものを確立→新しい技の捉え方を自分の中ではスタンダードにする

下積みはしなくても「技への探究心」は幾つになっても持ち続けたいものです。

以上、職人の独り言でした。

by 中野由唱 よしどん