刃物が持っている能力を引き出そう
- 2021年03月21日
こんにちわ
中野特殊刃物工業株式会社
代表で研師の中野由唱(よしあき)です。
切れないままの刃物は刃物ではありません。
刃物は使えば磨耗して切れなくなります。
研ぎながら使うのが、刃物を上手に使うコツ。
私が父親の創業した会社に入社してから43年になります。
最初の3年は研磨工として工場にこもって機械刃物と包丁を研いでました。
「仕事は見て覚えろ」
「人の仕事を盗め」
と、父親に言われて覚える、というよりも身体に叩き込むという状態で必死でした。
結果 入社3日目には、実際に機械をひとりで操作して刃物を研いでいました。
そして
4年目には営業で180軒の得意先を担当。
営業と言っても、得意先を定期的に訪問して研磨する刃物を預り持ち帰ること、が主な仕事でした。
昭和53年当時の旭川は家具メーカーが200社以上もあって、家具工場にはよく行きました。
そこで決まって耳にしたのは
「そこの機械に付いている刃、切れるかどうか見てってくれ」という家具職人さんの言葉。
機械刃物は安全カバーがあったり、機械の内側に取り付けてあったり、刃先を目視できない事がほとんど。
なので、素手で刃先の感触を確認して判断してました。
(指先の感触は、これで鍛えられたようだ)
切れるかどうかは使う人が一番よく分かるのにー と反発しながら。。
切れる刃物を常に使っていると
- 製品の品質が向上
- 原材料の節約
- 作業の省力化
- 作業者の負担軽減
その他、機械の消耗抑制効果あり。
刃物の見直しで、年間900万円の原料節約につながったケースもあります。
単独では何もできない刃物ですが、機械との相性・材料との相性を考慮することで
現状の生産性は見違えるほど向上するものです。
家庭の包丁もまた同じで
ほとんどの人が切れない包丁を我慢して使っているのが現状です。
切れる包丁を使うと
見た目も味も良くなり、食材の持つ栄養価を損なわずに調理時間も短くなる。
ニンジンを切っても、まな板は赤くなりません。
赤くなるのは切れない証拠。
長ネギを刻んでつながるのも切れない証拠。
研ぎながら使う刃物文化は、仕事や生活を今よりもっと豊かにしてくれます。
教 訓
世界が認めている日本だけにある刃物の文化を日本人は何も知らない。
1500年続く刃物の文化を日本人の手で繋げて刃物の能力を引き出そう。
- by中野 由唱 よしどん