日本刀仕上げ研ぎの修行は果てしなく続く

  • 2019年09月11日

中野特殊刃物工業の中野です。

刃物の専門家として工業用刃物の設計や生産現場で、現状でどんな種類の刃物を使うと品質と作業効率が上がるか、などをアドバイスしています。

そして私は、チップソー(丸ノコ)やカンナのような機械刃物と包丁、日本刀を研ぐ研師でもあります。

 

42年で約2万本の包丁を研いで来ました。チップソー、カンナはその10倍、100倍?

数えたことはありませんが、包丁以上の数です。。

 

刃物を研ぐ仕事は、単純作業の繰り返し

になりがちで「マンネリ」という言葉がすっぽりはまってしまうほど。

それを打開する為、私はいつも「今より早く」「今より精度を高く」を心掛けています。

もちろん手抜きはなしで!

 

そしてもうひとつ大事にしていること。それは、砥石の使い方。

 

手研ぎの奥深さにに魅かれ、日本刀の研ぎの修業に入って9年。

最初は見るものすべてが未経験のことばかり。

中でも砥石の形が「かまぼこ型」?

これには驚きました。

 

砥石の研ぎ面が平らではなく、中心が高く四角(よすみ)が低くなってるんです。

それまで砥石は、使うと真ん中が低くなるので 平らにならして使ってました。

砥石は平らが理想型だと信じていたんです。

しかし、使ってみて直ぐにその意味が分かりました。

ハマグリ型の日本刀が、美しく研ぎ澄ますことの出来る訳が。

砥石の曲面に合わせるように刀身を縦に横に斜めに大きく揺らしながら研いでゆく、まるで三次元の世界だ。

 

常識は固定されるものではないことを教えられました。

 

7月に日本美術刀剣保存協会の仕上げ研ぎの研修に参加のため、梅雨明けして連日猛暑日の東京に行ってきました。

1年前から決めていたことを実行しました。

 

全国からプロの研師たちが19人、それぞれに経験を積んでいる方々ばかりで海外からの参加もありました。

天然砥石が基本の日本刀の研ぎ。

しかし、天然物はすでに枯渇して 今は京都周辺でわずかに採掘されるだけ。

いわゆる練り物に頼らざるを得ないのです。

 

ここでも 皆、砥石には苦労していました。誰かが話し出すと直ぐに砥石の選び方、使い方、その癖など各々情報交換の場にもなります。皆の真剣に「研ぎ」を学ぶ姿に圧倒されながら、私もまた真剣でした。

朝9時30分から夕方5時までの3日間の日程もアッという間でした。

 

砥石の使い方もそれぞれ少しずつ違います。

他人の研ぎをほとんど見たことがない私にとって、又とない勉強になりました。月末の忙しい時期でしたが、東京へ行ってよかったと思います。

 

世界中で日本にしかない「研ぎ」の文化、ハガネの魅力。

そして、切れの良い刃物を使うことが私たちの暮らしをもっと豊かにしてくれることをたくさんの人に知ってほしい。

私の夢に向かって、学びの心を持ち続け行動することの大切さを強く感じた『学びの旅』でした。

 

by 中野 由唱 よしどん