常識とは誰が創ったものなんだろう
- 2018年08月31日
私は小学生の頃から学校を休んだ記憶が無い!
勉強は退屈だったが、友達と遊ぶのが好きだった。
丈夫に産み、育ててくれた親に感謝だな。
22才で家業を継いだその年に、風邪で熱を出して寝こんだことがある。父親に「這ってでも仕事しろっ」と言われた。それ以来 風邪で寝こむのは正月休みと決めている(笑)
60才も過ぎると「休息も道草も生きるためには必要なことだ」と強く思う。
心にゆとりを持つことで人は豊かに生きられる、そう実感する。
仕事においても ひと息入れたり、立ち止まったり、時にはその場から離れてみることも大切だ。
私は仕事柄、いろいろな角度から物事を見るようにしている。しかし、それも常識や固定概念で捉えてると、成果は出せない。
以前こんなことがあった。
原木(丸太)を板状に薄く挽き割って製材にする木工場のお客様から、
「作業のスピードをもっと早くしたい、後工程の仕上げがたいへんだから、現在の丸のこ刃(弊社オリジナル タイガーチップソー)の大きさを今より大きくして、刃数も増やして欲しい」そんな要望だった。
確かにチップソーの径を大きくすれば、駆動モーターの回転数を変えずに周速が速くなり切断速度は上がる。そして、 刃数を増やして目を細かくすれば、挽き割った木肌はきれいになる。
今でも そのまま お客様の要望を聞いて、大きく目の細かいチップソーを納める業者がほとんどだ。
言われたことに逆らって 別の丸のこ刃を納めて、それで上手く行かなかったらクレームになると思い込んでしまい、そんな危ない橋は渡りたくないと考える。
多分そんなことだと思う。
しかし、私が納めたタイガーチップソーは全く真逆のものだった。
従来のものより径は小さく、刃数も減らして荒くした。
それは、チップソーの刃厚を薄くしたことで全ての問題が解消された。
①切込む時の刃の摩擦抵抗が小さくなる
②小さい分、ノコ振れが無くなる
③振れないから挽き肌がきれいになる
④刃数が少く荒い分切込み能力が増す
⑤送材速度を上げることができる
⑥薄くなった分、歩留まりが良くなる
以上の結果、歩留まりの違いで年間の原料費が200万円の節約になった。
目先のことではなく、チップソーの特徴と機械の能力、使用する木材の性質と 総合的に捉えてそれまでの常識では考えられない刃厚のチップソーを設計した。なぜなら私は その薄いチップソーがダメだという事実を目の当たりにしたことがなかったからだ。
机上の理論だけで判断したくはなかったのだ。
この木工場はその後 作業がスピードアップして品質も向上し、最終的に年間700万円の増収につながったそうだ。
もちろん、「常識外れ」の設計にひるむことなく応えてくれたチップソーメーカーの技術と「心粋」には頭が下がる思いである、感謝。
毎日繰り返しの仕事をしていると、なかなか気づかないもの。でも様々な角度から、あるいは全く違う次元から一歩下がって見てみると、不可能なことがいつか可能になることもある。
そう思えた瞬間だった。
でも実際には、試運転が終わるまでドキドキだったなぁ。
常識と基本は必ずしも同じものではない。
そもそも常識とは誰が創ったものなのか、常識的に、ではなく基本に立ち返りたいものだ。
by中野由唱 よしどん